施設の利用者さんで夕飯時になると「誰かが私の部屋に入ってズボンを盗んで行った。」と言い始める方がいる。被害妄想のある認知症であろうと思われるが。今日も居室に「晩御飯の時間になるから食堂に行きましょう。」と誘いに行くと、「ズボンを盗まれて全部無くなった。」と言われるので「ご飯の後で一緒に探しますよ。先にご飯を食べましょう。」と誘って食事が無事終わると、被害妄想はどこかに忘れた様子なので一安心していたらその方が隣の方に話掛けていた。
そのうちに2人で立ち上がり「部屋が判らないのかい、一緒に行ってやるよ。」と言っているのが聞えた。
「どうしたの?」と尋ねると、被害妄想のある方が「この人が自分の部屋が判らないっていうから送ってってやるよ。」と。「そうなの、お願いね部屋の入り口にお名前が書いてあるし左の通りの奥から2番目です。お願いしますね。」と声かけをした。
一応離れて付いて行った。
部屋を見つけ「ここだよあんたの部屋、そいじゃお休みよ・」「ありがとね助かったよ、お休みね。」「お休みよ。」と分かれていた。
御2人の様子にほのぼのとした暖かさを感じた。
被害妄想の方と並んでその方の居室に向かいながら「今日はありがとね。助かりました。」と言うと「若いのにかわいそうだね。」と言われるので一瞬なんと答えようか迷ったが「そうですね。」と返した。
その後、居室で休まれたと思っているとパジャマ姿で「ズボンが何にも無くなってる。」と言いながら又出てこられた。「明日クリーニングから帰って来ますよ。」
と伝えると「そうか。」と納得されたのか居室に戻られた。
夜勤者に先程のやり取りを伝え仕事を終えた。